怒りの子ども(その3)

※ この投稿は、2019年12月にFacebookに投稿した記事の再掲です。

この子はいつも僕に背を向けていた。
世界に絶望し、誰にも心を開かない子ども。
僕はただそばにいるしかなかった。

居続けていれば、そのうち心を開いてくれるかもしれない。

しかし、今、初めてこの子は僕の方を見ている。
それも、炎のような怒りに燃え、泣きはらした目で僕を睨み付けている。

「・・・この子、怒ってるよ。僕に対してすごく怒っている。」

「まさおちゃんは、いつもこの子を切り捨ててきたんだね。他者のニーズを優先して、自分のニーズを諦めてきた。それで毎回この子は諦められ、見捨てられてきた。」

ショックだった。
世界に絶望しているこの子ども。
その絶望は僕が創っていた。
僕がこの子を見捨て、絶望の淵にたたき落としていたのだ。

誰かや何かに絶望させられた訳ではなかった。
自分で自分を絶望させていたのだ。

そして、首を絞める2本の腕の主にしても、僕は抵抗すれば出来た。腕を振りほどこうとすれば振りほどけた。
しかし僕はそうせず、たぶん死んだ。
僕が諦めたことによって、彼は罪人となった。
僕が彼を罪人せしめたのだ。
手を振りほどいて生き延びて、意見の相違を埋めたり、異なる主張を戦わせたりしたら、もしかしたら、二人の違いを超えた真理にたどり着けたかも知れないのに。
僕は自らその機会を諦め、彼にもその機会を失わせた。

「まさおちゃん、この子にどうしたい?」

「・・・どうしようもない。ただ謝るだけだよ。それしか出来ない。この子が許してくれるまで、いや、許してくれなくても謝り続けるしかない。」

「この子の炎のようなエネルギーが、まさおちゃんが本来持っている力だよ。この子を諦め、見捨ててきたことで、まさおちゃんは自分のエネルギーも切り捨ててしまった。」

小さな子どもに謝った。
子どもは怒りに燃えたまま、表情を変えない。
ただ涙ににじみ、大きく見開いた赤い目で僕をにらみつけるばかりだ。

ただただ申し訳ない、という思いで、この子を見つめていた。
そのうち、子どもは目を閉じて、僕の腕の中で眠ってしまった。

「そろそろ、ヒーリングに移ろうか。」

そう舞衣ちゃんが言った。

「ね?すぐヒーリングに入らないで、ちょっと会話した方がいい感じがするって、言ったよね?」

にやりと舞衣ちゃんが笑った。

(終わり)

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